講義に引き続き行われた質疑応答についてご紹介します。
講義
前半、
後半も公開しています。
北都留森林組合参事 中田無双氏より
Q:国の政策で、今年から搬出間伐をしないと補助金がもらえないという事で、総論は賛成ですが現実問題として、現場は切り捨て間伐をやらざるを得ない状況の中、ha当たり100立方出せば認めるということになっている。いいかえれば、あとは捨ててもよいことになる。この方法ではいずれ行き詰る。2回目の切り捨て間伐をどういう方法でまわしていったらよいのか。アドバイスをいただきたい。
A:デンマークはバイオマス利用が盛んで、エネルギー利用が可能伐採量に肉薄してきている。エネルギー用材を輸入しなければ、地域の熱暖房エネルギー利用に追いつかない。
日本では7月から、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度ができて、キロワット当たり30円という値段が決められ、これはとてもいいと思っている。杉だとバイオマス工場に持っていけば、立方m当たり15,000円で電力会社に買ってもらってもよい。
デンマークでは架線集材の見直しが進められている。デンマークも切り捨て間伐がいっぱい出ているけど、道端まで全木集材をして道端にストックしておく。それをエネルギーとして利用していこうとしている。角材にもならない材は、チップとしての出口をつくって熱工場とか病院、学校に持っていくような出口をつくっている。
例えばウィンチで架線集材して、チッパーを入れたらどうか。伐倒は森林組合がやる。後は自由に持って行ってください。伐った木は所有者のものという時代ではなくて、誰かにあげてそのかわり山をきれいにしてくださいということでもいいのではと思います。江戸が大火にあった時に幕府に保科正之という名君がいて幕府のコメが焼ける前に持ち出した人にあげた。米が焼かれずに持ち出され、炊き出しをしないですんだ。という例もある。
間伐材も区画を決めてマークしたのは持っていっていいというようなやり方もある。
これから、25,000人では4,000万立方mを賄いきれないので、地域で出た材がじくじくと集まって、4,000万立法mになる。
実はオーストリアでは初回間伐は森林組合にお願いして、2回目から自分で伐ってみんなで示し合せて集めて、ロットをつくって買ってもらっている。県森連のようなところが目配りをしてやっている。
燃料チップは建築廃材が安いし、石炭もまだまだ安いのでどう競争していくか。競争できないところに県民税なりの税制補助をやるしかない。
行政の支援がないとできない。切り捨て間伐の面倒を国は見てくれないけど、県のエネルギー政策として、面倒見ましょうというのがあってもよいと思う。
山に石油が落ちているという風に考えればいいのかなと。架線集材が見直されている。
住工房なお(株) 社長 鈴木直子氏より
Q:木材コ―ディネータ―をしています。山の価値をお客さまに伝えながら餅屋は餅屋としてネットワークをつくってやっていこうと思っているのですが、一人でやっているので進まないのでどういうネットワークを作っていったらいいか。
木材のデーターベース化をはかっていきたいのでアドバイスをほしい。
A:どこに何があるかを知っているのは大事です。データーベース化は必要と思います。
一人ではコ―ディネートできませんので、山の入り口と出口の人と連携して協議会のようなものを作っていかないとコ―ディネートできない。
できるだけ大勢の人に利益を分配されるやり方が大切に思います。
緑のダム会員 伊熊敏郎氏より
Q:カーボンフットプリントの制度として国産材を拡販するのに効果があるのか。国産材のエコポイント化など炭素固定の価値を見出そうということだと思いますが、この2つの制度は林業生産の発展につながるのかどうかご意見を伺いたい。
A:ウッドマイレージですが、商社が九州でコ―ディネートをやりたいということで林道に投資し機械を買ってあげる。引き換えに、商社が製品を製紙工場とかに分けますよという絵を描いたが実現しなかった。それは船で一度に5,000立方、10,000立方と入ってくる。カーボンフットプリント以前にオーダーが違う。山に林道を投資するよりも、船で運んできた方が安い。カーボンフットプリントは経済ベースには乗りにくい。むしろ怖いのは石炭が毎日貨車200輌で港に行って日本に来ている。石炭を燃やして、排出しているCO2排出量を外国に払っている。火力発電に使うよりもバイオマス発電の施設を作ってもいいのではと思います。
エコポイント制度は県では成功していると思います。
木造住宅を建てると、柱何本あげますよとなるけど、量としてまとまっているか統計を取るとそれほどにはなっていない。
車にエコポイントを付けるけど、むしろ木造住宅につけた方がよいと思う。
三井物産 環境・社会貢献部 社有林・環境基金室 齋藤昌史氏より
Q:架線集材が見直されていると言う事でしたが、オーストリアの例と他の例は同じなのか、架線集材の条件は違うけどバイオマスの需要があるので成り立っているのか。お聞きしたい。
A:オーストリアも日本と同じ地形が急峻ですから、ha当たり40m入れて、集材距離150mにして、出していこうというコンセプトが40年も50年も早い時期からやっているのですが、バイオマス利用が手っ取り早いのではという理論が出てきた。
日本はタワーヤ―ダ―のブームが過去3回あった。1回目は昭和40年代にかけてだが、道がなく断念した。1990年代にブームがあった。上げてきた材木をさばくローダーが普及してなく、持て余してしまった。ガイラインをはらなければいけない。
(註:ガイライン:控え索)
スイングヤ―ダ―は遠くから持ってこれない。20から30mしか持ってこれない。スイングヤ―ダ―の技術に行ってしまったけれど、今度3回目のタワーヤ―ダのブームが来ると思う。エネルギー利用では、タワーでなくてもトラクターのウインチでもかまわない。
ヨーロッパの機械は20トンで、日本の林道は走れない。専門の会社がタワーヤ―ダを持っていて、全国をタワーヤ―ダで出しまくっている。
日本は補助金付けて一つの組合に買わせてしまう。ところが4,000万〜5,000万円で購入させてしまいなかなか償却できない。
日本は道がまだ入っていなく大型化するべきではないと思います。
(株)山康商店社長、芝浦工大客員教授 山崎尚氏より
Q:出口にもっと力を入れていかないと解決できない。それと切り捨て間伐を許可すべきでないと声を大にして林野庁に言うべきだと思う。そしてバイオマスで間伐を使う事を強く奨励すべきではないのか。
A:ドイツで林業機械を見てきましたが最近の傾向で、大型チッパーのシェア―が出てきた。大径材も一回砕いてから、チッピングする。
もう一つ増えているのがマキ割り機械です。
燃料としての利用が増えてきた。
相模原市でも熱利用で、病院とか学校での利用を考えるといい。
資源収奪の時代が来るのではないかとい思う。
Q:2100年には人口5,000万人になってしまうといわれている中で、既存の住宅も再利用の木材利用を芝浦大で研究しており新しい木材利用が減少する中で、どうしても出口開拓のための輸出を考えざるを得ないと林業は報われないと思いますがどうでしょうか。
A:需要が成長量以下ですから、その分伐って輸出できるのではないかと思います。
日本の需要の4割が紙ですが、紙の自給率は低い。中国は10年前は1人当たりの紙パルプの使用量は10キロぐらいで、日本人は250キロぐらい、中国は一昨年は60キロ、昨年は80キロでだんだん増えている。中国が紙の消費の世界1位で、いずれ紙は貴重品になっていくだろう。
切り捨て間伐が紙に行くのか、エネルギーに行くのか、将来大事な問題ではないかと思います。
2050年には「バイオフューエル」というのが増えるのではないかとカナダの人が発表していましたが、3つのF、FOOD,FUEL、FIBER、新しい需要を開拓しないと。補助金付けて木を伐っても土場にあふれて材木の値段が下がっているのが今の仕組みではないかと思う。
U氏より
Q:設計をやっている人間として住宅に力を入れていきたいと思っていますが、建物利用とバイオマス利用の関係をお聞きしたいのですが、例えば、30坪以下の建物を年間100棟建てた場合の木材の消費量と、バイオマスエネルギーの消費の量とどちらの方が消費が多いかお聞きしたい。
A:一軒20立方として、100棟で2,000立方ですね。木材で暖房とると一軒年間10トンのチップを使うと言われています。燃料は毎年使う。住宅は一軒建てるために木を育てるのに60年から70年かかる。家1軒は30年で建て替えるとすると、1世代の木を2回使う。時間軸で見ていかないと比較はできない。
Q:できる限り出口の部分で地元の木を使っていきましょう。ということをエンドユーザーに分かりやすく伝えていかねばならない。
また、相模原市が跡地利用で住宅地開発をしていこうという計画を立てている。一民間企業だと、知れているので連携が必要。相模原ブランドをつくろうという時にネットワーク化が必要になる。そこで中心になる人物が必要である。官・民・学が一体で連携していく方向性が必要。ハウスメーカーはブランド力でアピールできるが、地域の一工務店がいいものを持っていても、ユーザーにアピ―ルできない。お願いしたいことは、オープニングセレモニーでこれだけいいんだということをアピールしてほしいと思います。
A:ある人に言わせると、1軒1軒バラバラにやるのでなくて、広い土地があれば集落にして、そこをバイオマスで地域の暖房を行う。いわゆるバイオマスタウンのようにすればインパクトが強いのではないか。
Q:正に住田町森林組合の例がそれでぜひ一度見てほしいです。
相模原商工会議所 都市産業研究会・会員 長崎克央氏より
Q:今回の講演で共感いたしましたのは、マネーベースでない違う価値観でとらえる必要性を説いていたことです。
青根で全て地元の木で建てた家を見た時、周辺がすべて山に囲まれ、素晴らしい景観であった。そこで使っている木が裏の山の木で非常にリアルに感じられた。地産地消として地元の木を使うことがとても美しく違和感がない。お金でない価値観はある種の美意識というようなもので、そのようなものをたくさん感じる機会があるといいと思っております。例えば、農業の場合は、市民農園がありますが、森林組合の協賛で「市民農林」の様なケースがあってもいいのでは、例えば10年間そこを整備してくれたら、そこの木を格安で売ってもいいようなこととか、間伐したら家に持ってきてマキに使ってもいいとかそのぐらいの事は細々やっていくと、環境教育の面でも、それまで入ってはいけないと思っていた山に、山の空気、絞り水などの体験が山に行ったら元気になったという積み重ねが、消費地と山をつなぐうえで相模原市は非常にいい立地を備えていますので、みんなで情報を共有していけば相模原市の森林も素晴らしくなると思います。
NPO法人さがみはら環境活動ネットワーク会議
相模原市温暖化対策委員 増田氏より
Q:市民農園をやっているが市民林園という提案は素晴らしいと思いました。
これからCO2削減のために市民協議会を立ち上げて、この様な提案を出していきたい。
また、自身も山を持っているのでこれからは山を磨くことに取り組んでいきたい。
記録:丸茂 喬(本会、理事)